【書評】経営者の条件 - 成果をあげるために必要なこととは?
経営者の条件とはなんとも堅苦しいタイトルであるし、世の中の大半は経営者ではないのだから、読者の対象が狭い本だなぁと思いながら手にとってみました。
しかし実はこの本は原題がThe Effective Exectutive (成果をあげることのできるエグゼクティブ) というタイトルなので、何も経営者に絞った話ではありません。
そのなかでも、エグゼクティブとはという章をご丁寧に用意してくれており、こんなことが述べられております。
今日の組織では、自らの知識あるいは地位のゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブである
これを読むと、エグゼクティブ=偉い人というような階級を指すわけではなく、組織に貢献する知識労働者のことを指しております。
成果の対価で賃金をもらっていると考えるのであれば、ホワイトワーカー全般はエグゼクティブ(でなくてならない)といえなくもないでしょう。なにやら、Superdry(極度乾燥しなさい) みたいになってしまいました。
世の中では、知識労働者と肉体労働者と大きくわけられるけれど、世の中のニーズは肉体労働者と言われる職業が圧倒的に高い気がしています。東京オリンピックや東北復興での建設業従事者や、宅配の需要増による配達員を見れば顕著なように。
知識労働者はというと、この定義で言う、「エグゼクティブ」と「なんちゃって知的労働者」にわけられると勝手に思っています。
この本では、
成果をあげることがエグゼクティブの仕事である
と述べているので、成果を出す(もしくは出すべくコミットしている)人たち以外は「なんちゃって知的労働者」にカテゴライズできると勝手に読みながら思いました。思ったっていいじゃない、書評なんだもん。
こんな情勢で採用の門戸が締まりかけてはいるが、いわゆる成果を出すエグゼクティブの需要はあり、だからこそ優秀な人材を求めて争奪合戦が出ているのでしょう。
前述の話でいうと、「なんちゃって知的労働者」と言われる人が、いわゆるリモート時代・AI時代に淘汰される人なのかもしれません。
さて。会社や上司から成果をあげろ成果をあげろ、と言われもう成果をあげろと言われてもそれができないからアチキは困っているというアナタに朗報です
成果をあげる方法は習得できる
と書かれており、それを読み解いているのがこの本である。自己啓発本にカテゴライズされるものだろう。
その中でもポイントを大きく5つにあげていて、ざっくり要約すると
- 時間の有限性を知る
- 成果から逆算してことをなす
- 強みにフォーカスする
- 優先順位をつける
- 意思決定をする
ことが書かれています。
例えば、最初の解説は
通常、仕事についての助言は「計画せよ」から始まる。もっともらしく思えるが、問題はそれではうまくいかないところにある。計画は紙の上で消える。よき糸の表明に終わる。実行されることは稀である
とギクリとすることが書かれています。自分の胸に手を当ててみても、連休や休日に自分のやりたかったことを思っていたとおりに実行できた試しはありません。
さて、成果から逆算してことをなす、ということも書いてありますが、自分に割り振られたタスクに没頭して全体感を見失って上司に注意されたことがある人も多いのではないでしょうか。
成果を出す、と考えたときに、成果はミッションに対する貢献であるので、これらのポイントは組織貢献へのコミットを前提とされていると読み取れます。
日本人の中で、「成果を出せ」という話は聞くけれど、「貢献」ということばが出てくる場面が少ないような気がしています。
私は外国人もマネジメントしていますが、レビューをしていると、どれくらい自分が部門にContribution (貢献)できたか、という言葉がよく出てきます。
仕事の範囲が良くも悪くも曖昧な日本人に大して、Job Descriptionが明確な欧米文化のほうがJob Descriptionの再現=貢献というイメージも湧きやすいのかもしれません。
とはいえ完全に範囲を決めることが是か、と言われるとある意味ファジーさが日本人の強みであるし、だからこそが生産性を度返しして、がむしゃらに、ときには特になんのためにやっているのかもわからぬまま頑張るからこそ、日本企業が伸びてきた側面があると思います。
さて、昨今の情勢でWFH(在宅ワーク)の機運が流れて、今後の働き方が大きく変わるのではないかと言われています。(私はこれまでの広義の意味での働き方の慣性は大きいので正直そこまで変わらないとは思っている派ではあります)
大きく変わった点として、成果を出せる人(エグゼクティブ)、とそれ以外に大きく二分されているというという話を企業でマネジメントしている人からはよく聞きます。
これからWFHが始まって初めての人事考課という場面に遭遇する方も多いと思いますが、WFHで会社行かなくてラッキー♪と担当がいっている裏で、仕事ぶりが目に見えないことで上司からは酷評されている、なんていうホラー話も出てくるかもしれません。
そんな中でこの本を読みながら成果とは?ともう一度考えてみるいい機会かもしれません。